身体に合った椅子 その2 2007.1.30

  特注の高座椅子についての続きです。

 モックアップの椅子を制作する傍ら、クッション用のウレタンをどうしたらよいか思案していました。
 現在、低反発ウレタンのものが数多く制作されていますので、それもあわせて、検討を始めましたが、弾力・通気性・耐久性など、KUKUの工房では分からないことが色々ありました。

 ちょうど、同じ時期に工房では、注文の籐のアームチェアーの制作が進んでおり、背骨を傷めたお客様に座っていただくために、籐の上に薄いクッションをひく必要があり、身体に負担をかけずにどの様なものがふさわしいか考えていたところでした。
 


 そこで、思い出したのが、もう30年近くも前からの知り合いで諏訪で身障者の家具を製作している古松家具工房でした。 ここでは、独立した何人かの方達が協力し合って、一つの工房という形で仕事をしています。そこで、スタッフ皆で、見学方々、アドバイスを頂きに伺いました。

 工房では、普段見ることの少ない色々な車椅子が並んでいました。 苦労して開発された新しい車椅子に座らせていただきましたが、身体に吸い付くようで、姿勢を変化させても身体に無理がかからないような工夫がされていました。
以前に福祉機器展に行ったときも、あまりにたくさんの種類があって驚いたものですが、実際に座らせていただくと、みなさんの努力が、心地よさを通して伝わってきました。

 2階の制作室ではウレタンをカットし、それにかぶせる布を縫っていました。たくさんのウレタンや布がしまわれていました。 ウレタンの弾力は、なにやら難しい数値を計算して出すそうで、その表を見せていただきましたが、我々には手に負えそうにもありませんでしたので、古松工房で使用しているものでお客様に合いそうなものを3種類選んで分けて頂くことにしました。 又古松工房では、一人ひとりの身体に合わせて、ウレタンを身体に沿うようにカットするので、そのためのオリジナルの道具や、やり方を教えていただいたり、市販されている不思議と思われる機能の色々なクッションも見せていただいたりしました。本当にあっという間に時間がたち、皆さんにはお忙しい中、本当に親切にしていただき、感謝しています。

 クッションも解決したところで、制作したモックアップの椅子をお持ちしてお客様に座って頂きました。
 実際のクション用のウレタンを置いてお座り頂くと、若干高かったことと、太腿の裏側の圧迫感が、お客様よりも私たち製作者のほうが気になりました。そこで、全体の高さを1.5cm低くする代わりに、座の前をを1.5cmだけ低くし、前にほんの少し出して座って頂くと、具合が良くなりました。少しですが、座を前方向に傾斜させたわけです。そのほか、軽くするためと、横幅の広さで感じる圧迫感を取り除くために、必要のない座の後の角を丸くすることにしました。
 ウレタンは、低反発のものも試していただきましたが、やや固めのウレタンがちょうど良いということになりました。



 実はこの椅子がデザイン段階で横幅が広くなったのは、座ったり立ったりする時の補助に座に手を着くところが欲しいというご希望があったからです。ただ、手を付いて身体を支えるからにはかなりの力がかかるわけで、柔らかいクッションでは手が沈み込み、力がうまく伝わりません。そこで座の両サイドが木になっているデザインも考えてみたのですが、お客様にはどうも違和感があるようでしたので、両サイドだけ半分木を残し、半分はウレタンを置き、全体を薄いウレタンでくるむようにしました。これも古松さんのアドバイスです。身体をソフトに支え、かつ、力がしっかり加えられるようにしたのです。

 これですべてが決まりましたので、本体の制作をしながら、座の布張りを職人さんにお願いすることになりました。このときに気をつけたのが、もっとも圧迫される太腿が触れる部分に縫い目を持ってこないという点でした。このような変形で、クッションの高さが高い座には、従来、高さとなる側面にまちをつけて縫うようになるのですが、それは避けたかったので、そこに縫い目がこないよう、職人さんと何度も意見を交換して、、何とかこちらの思うように仕上げてもらいました。
 布は、KUKUの定番の椅子に使用している物と同じ、絹と綿の混紡で柿渋で染めたものです。裏側もいつもと同じように、ループできれいに処理してもらいました。

 最後は、実際の仕様と、お客様がお座りになったところをご紹介したいと思います。