アトリエ訪問その1 2007.03.13

  2月とは思えないほどの暖かいある日、皆で前から約束をしていた2組の若い工芸家夫妻をお訪ねしました。最初に訪問させていただいたのは、スタジオ KUKUから1時間ほどのところにある群馬県安中市で木の器を制作している工房世二(せい)です。任性珍(イム・ソンジン)・大石祐子夫妻の工房です。明治時代から建っている大きな民家を漆工房と自宅にし、別棟に挽き物工房がありました。 昨年暮れにお二人で初めての個展をされ、KUKUのニュースでもご紹介しました。


 お二人は、石川県挽き物轆轤技術研修所で、木工轆轤の技術と漆塗りを学び、2005年に安中市で工房を開きました。 漆塗りの木の器というと、日本ではいくつも大きな産地がありますが、どこも仕事は分業制になっていて、成形から仕上げまでを一貫してこなすスタイルで仕事をする人は少ないようです。人間国宝の川北良造氏に師事されたお二人は、氏のアドバイスもあり、現在のスタイルで仕事を始めたそうです。

 轆轤工房は、二人で床の基礎作りからかかわって作り上げたそうで、随所に工夫がされていました。 それぞれが独立した仕事をすることが多いので、同じ作業台が2つ並んでいて、高さや奥行きなどそれぞれの身体に合わせて微調整されていました。轆轤は、もっともシンプルな形式のもので、ベルトをクロスさせることで回転を変えるため、モーターをいためることがないのですが、現在ではもう作られていないそうです。木工用に限らず、昔から作り続けられた機械や道具が一つずつ姿を消してゆくとともに、出来なくなってしまった仕事が増えてゆくことは、さびしいですね。

 
加工に使う刃物はすべて手作りで、たくさんの刃物がありました。
これを作るための鍛冶仕事のスペースもあり、まずは、道具作りとその手入れのための金工の仕事が出来ないとはじまらないわけです。

挽くときは、まず外側を形作ってから、内側を成形するそうです。刃物もあら挽き、仕上げ挽きと取り替えるそうです。
脇の下にしっかりと柄を挟みこんで固定をして行います。漆を塗るので、最後は小刀でていねいに仕上げてゆきます。


見ていると、あっという間に形が出来上がってゆきます。


荒挽き→中挽き→仕上げ挽きと進めてゆきますが、その段階で材を寝かしておく時間がとても大切で、材料・形・季節などによって、それぞれ異なるそうです。 蔵があり、1階は、荒挽き用、2階は中挽き用の乾燥室になっていました。びっくりするほどたくさんの器の子どもたちが並んで、製品になるのを待っていました。


 自宅と同じ建物に漆工房があり、拭き漆の仕事の工程に合わせて、1階と2階に分かれており、2階には、漆を乾かすための大きな風呂と呼ばれる棚がいくつか置かれていました。
漆の仕事は、ほこりを嫌い、温度や湿度の管理も大変ですが、お二人でいろいろと工夫されていました。

 出来上がった器をためしにまず使うのは、2歳のお子さんだそうです。彼が何の遠慮もなく日々使うことで、製品としての耐久性が分かり、自信を持って製品として出すことが出来るとおっしゃった言葉が印象深く残っています。

 仕事場や、お仕事を拝見させていただき、一つの器が出来上がるまでのたくさんの工程で自然の恵みに感謝して日々努力を続けるお二人の木に向き合う真剣な気持ちが伝わってきました。 自然から頂いた大切な命をどうしたら生かせるか努力を積み重ねている姿がとても印象的でした。木取りから拭き漆仕上げまでのたくさんの工程をすべて行うというのは、とても大変なことではありますが、作り手の想いが一貫して作品に反映され、物作りとしては理想の形だと思いました。これからのお二人のご活躍を心よりお祈りいたします。
 
   お忙しい中、本当にありがとうございました。