村地忠太郎氏の工房見学  2011.01.16


 第4回まで終了した曲木の研究会。色々なアプローチの仕方がありました。
 2010年11月、長野県木曽でへぎ木の曲げ物の仕事をなさっている村地忠太郎氏の工房をお訪ねすることができました。村地氏については、以前に「こころもよう」で、ご紹介させて頂きました。檜やさわらの木を挽き割ったへぎ木で曲げ物を制作されています。へぎ目がとても美しく、自然な佇まいが感じられます。。93歳の現在も現役でお仕事をなさっていらっしゃいます。 
 



 現在は、曲木のお仕事のほかにも、細かい組み木であかりの作品作りもされています。新しいデザインにも挑戦され、日々、研鑚を積まれていらっしゃいます。 


 居間には、たくさんの作品が展示してありました。これまでの注文の仕事は、必ず今後のためにひとつずつ、ストックを作って置かれたのだそうです。どんな質問にも素早く、幅広い答えが返ってきます。また、フットワークが軽く、「これは、こうなるから」とか[ここにあるから」と、色々なものを出して見せてくださいます。立ったり座ったりの身のこなしの軽いこと!軽いこと!炬燵にあたっていた私たちは、恐縮してしまいました…


 9月に松本で展示されていたお重の木地もありました。四隅のアールは、細かい筋目を鋸の刃の厚みの違いを利用して2段階に分けて鋭角な溝を何本か入れて、曲げてゆくのだそうです。 外側はへぎ目ですが、内側は鉋をかけたフラットな面になっており、合わせ目は控え目に桜の皮で留められています。淡々とした仕事であるからこそ、細かい心使いや仕事の良さがストレートに伝わって来たように思います。

 

     


 たくさんの作品を拝見させて頂いてから、実際の制作を見せていただくことになり、工房へ移動です。階下にある工房への階段は半分材料で埋まっていて、体格の良い人は通るのが大変そうでした。スリムな村地氏は、足取りも軽く、たったったと、降りて行かれました。

     



 棒状になった材料にのこぎりで刻みをいれてゆきます。とてもリズミカルに進んでゆきます。この材は、サットウという道具で大体の厚みを決め、水につけて(一昼夜から2,3日)から鉋をかけてあるものです。

     

 刻みが入ると、お湯をかけて曲げやすくしてゆきます。これくらいの細いパーツですと、熱湯をかけるくらいで良いそうです。刻みのところを内側に少しずつ曲げてゆき、合わせ目を木のクリップの様な道具でとめます。これを何段かずらし重ねることで、菓子器の側面となるそうです。熱湯をかけることで「水気を追い出す」と言われ、乾燥が早くなるそうです。
 

     


 荒削り用のサットや鉈など、色々な道具を見せて下さいました。中には、お父様の代から80年位使い続けているへぎ鉈もありました。
座られた位置から手を伸ばすと届くところに色々な道具が仕舞ってあり、一度作業台の前に座れば、どんどん仕事が進んでいくようになっていました。

 材料となる檜は、200年以上の樹齢のものでないと幅がとれずに使えないのですが、現在ではもうほとんど手に入らないそうで、現在使用している檜は、30年ほど前に買ったものだそうです。へぎに適した素姓の良い木の見分け方を伺ってみました。
 1.まっすぐに目が通っていて、ねじれていないもので、これは皮を見て大体判断出来るそうです。
 2.節のないもの。
 3.芯がきちんと中央にあるためには、形がまんまるなものであること。
 人と同じで、見た目におとなしいものは、素直な材であるということでした。

     

 工房は川沿いに建っています。家の土台の下は、材料置き場になっていて、たくさんの材料が積んでありました。河原では、材料を干す作業も行われますが、大雨で何度か材料が流れてしまったこともあるそうです。 
 村地さんは毎日、ご自宅から20分ほどの工房に歩いて通ってこられています。

 

 木曽漆器が盛んだった頃は、材料は塗師屋が木地職人に分けるものであり、磨きの作業も専門の人がいたりと、かなり分業化して行われていたそうです。現在、木曽でへぎ板の仕事をされるのは、村地さんおひとりだそうです。
 たくさんのことを学ばせて頂いた1日となりました。村地さん、貴重なお時間をありがとうございました。そして、これからもご活躍をお祈りいたします。