第4回 曲木研究会  2011.01.16


 第4回のテーマは「アイロンで曲げる」です。今回は、1,2回と同様に松本の広い会場で開催されましたので、たくさんの方々が参加しました。
 今回の一連の曲木の講習会を通して、このテーマが最も不可思議でありました。煮たり蒸したりせずにアイロンをかけるだけで木が曲がるのでしょうか? 百聞は一見にしかず!
 今回の講師は、兵庫で木工をされている徳永順男氏です。
 

 曲げ木は小さなものですと、電子レンジを使用しても出来ます。企業などは、この電子レンジの応用を本格的な設備で行っています。個人工房の場合、大きなレンジはありませんし、物によっては、煮たり蒸したりすることが不可能なものもあります。
 徳永氏は、湿度と温度のバランスが良いと、ある温度から曲がりだすことに気付き、試行錯誤の上、今回の方法を考えたそうです。
 乾いた木を濡らしたり、濡れた布でくるんだ物をアルミホイルで包み、この上からアイロンをかけます。10mmで10分ほどが目安だそうです。柔らかくなったら帯鉄で挟み、ウィンチで引っ張り上げて曲げてゆくという一連の作業をまず、スライドで見せて頂きました。 

 
 さて、いよいよ実演です。今回は、30mm角の山桜が素材です。目の通っている木ならば、板目・柾目関係なく、どんなものでもこの方法で曲げられるそうで、45mmくらいはOKだそうです。この方法ですと、部分的に曲げることも可能です。また、硬い木の場合は、しばらく水に漬けておくと良いそうです。
 濡れた布を巻いてアルミホイルでくるんだ木を120度位に熱したアイロンで均一に押さえて行きます。湯気が出てきます。水分が足りないと思った時は、木口側から補充します。
 巻いている布が木のアクや余分なものを吸収してくれる効果があるそうです。

     


     

みなさんで交代でアイロンをかけ、30分。アルミホイルを巻いたまま、すぐに曲げにかかります。ホイルを巻いたままにすることで温度の低下を防ぐことができ、曲げに大慌てすることがなくなるということです。
 今回、ウィンチはありませんので、参加者何人かの力で型に押し当ててゆきます。
 

     


 帯鉄を触ってみて、温度が下がっていれば、はずします。型から外すときにほんの少し戻りますが、乾くと全く戻りがなく、表面の水分さえ乾けば、すぐにでも使用できます。また、時間をおいてからでも、違うアールに直したり、部分的に異なった方向へ曲げたりすることが可能で、量産向けではありませんが色々な可能性がありますね。
 それにしても目の前で、たった30分で30mm角の材が曲がってしまったのには、驚きです。

     

 この後、徳永氏から玉鋼(たまはがね)の鉋の話があり、実際に色々な鉋を見せて頂きました。参加した皆さんは、思い思いに手にとって実際に削ってみていました。
 工房でも大小、色々な形の鉋を使用していますが、片手で使える南京鉋は、初めて見ました。普通、南京鉋は両手を使うため、位置を変えるときにひと手間かかりますが、これは優れものですね。私が木工の制作をするならば、すぐにも作ってみたいと思いました。

     

 

 
 鉋の話が盛り上がったところで上松の技術訓練校の上條先生の鉋削りの実演がありました。先生は削ろう会のメンバーでミクロン単位の薄さの鉋屑を出して削ってゆきます。立派な鉋がいくつも並んでいます。向こうが透けて見える鉋屑がするするっと、途切れることなく、出来上がってゆきます。皆さんから「おお!っ」と、声が上がります。
 長い材に鉋をかけるときには、足の運びをs字にして、腰で引いて掛けてゆくのがこつだそうです。

 
 そして、今回のゲスト、日本伝統工芸会の会員、須田賢司氏(群馬県)と宮本貞治氏(滋賀県)がお持ちになった作品を拝見させて頂きました。いつも、ガラス越しに眺めていた作品を蓋をあけて中まで見られるなんて、またとない機会です。
 まずは、須田氏の作品。南十字星をイメージした献保梨の飾り箱です。本体には、シャム柿、黒柿のマグロ(縞がなく、真黒なところ)などの材も使われ、ピンクマッスルというメキシコヨウガイや鹿の角、WGなどを象嵌して、夜空の美しさを表現している何とも素敵な作品です。漆で仕上げられています。中箱は、マタイというイチイの仲間の木で作られていて、こちらは素材の味を生かすために椿油で仕上げているそうです。 薄い板の指しもので作られていますが、すべて無垢板で、接着はニカワを使用しているそうです。 蓋の裏側も象嵌がされていて、見るほどにため息が出る美しさです。以前伝統工芸展の会場で拝見し、中がどうなっているのかとても興味がありましたので、今日は拝見できて、本当にうれしく思いました。

     


 次は、宮本氏の作品です。伝統工芸木竹展で賞をとられた文机がとても印象に残っているのですが、今回は、波目がデザインされた栃の木の刳りものの箱をお持ち下さいました。 有機的なアールが、何とも美しい作品です。なんと水上スキーの波がヒントとなったそうです。美しい波目は、アールのついた鉋を色々と使い分けての削りと漆を塗ってからの研ぎ出しで成形してゆくそうです。この作品は25回ほど漆を掛けていています。最初の漆を摺るのが最も大切で、徹底して木地に漆を吸いこませてゆくそうです。 品の良い照りがあって、引きこまれそうな漆の上がりです。

     


 今回は盛りだくさんで、見て、聴いて、触れて、感じてと、時間があっという間に過ぎてゆきました。大先輩の仕事や作品に触れ、若い方たちには、大きな刺激となったことと思います。 講師やゲストの方々に心よりお礼申し上げます。



 →第5回に続く