関西の工房見学 その1 2012.10.04

 ご報告が遅れました。
 8月、竹工芸の展覧会に伺った翌日、信州木工会のメンバーと一緒に滋賀県でお仕事をされている3人の木工家の工房を見学させて頂きました。
 

 最初に伺ったのは、日本伝統工芸会会員の宮本貞治さん。黒田乾吉氏のもとで10年修業をされたそうです。
 大津市の琵琶湖を望む林の中に工房とご自宅はありました。緑に囲まれた環境で、居間の窓からは琵琶湖を望むことが出来ました。



     

 ご自宅に案内して頂き、こちらでの暮らしや工房を作られたいきさつなどを伺いました。
 御自分で床を張り、建具を作られ、漆を塗ったお部屋はとても落ち着いた感じでした。作品でもあるベンチにそっと座ってみましたが、ほっと安らぐ感じでした。古道具屋さんで見つけた敷き板に大きな壺が置かれ、ハスの花が活けられていましたが、豪快で宮本さんらしく、お部屋の雰囲気にぴったりでした。
  
 和室には、作品が置かれていて、伝統工芸展で拝見したことのある作品も、実際の暮らしの場で見るとまた異なった印象を受けます。
 中央に置かれていた欅の楕円卓。宮本さんの作品の特徴である波文が美しく彫られています。光の当たり方によってそのシルエットがはっきり見える所とぼんやりした姿になるところとがあり、作品としての奥行きを感じさせてくれます。


 
 メンバーの皆さんは、作り方について色々と質問をされていました。周囲を囲むようなしつらえの脚の部分は、接着剤と漆を混ぜたものを使用して、桶を作る要領で作っていったそうです。
 



 私が印象に残ったお話は、デパートでの展示の様に湿度が低くとても過酷な状況に対応させるために、シーズニング(荒木取りして材料を乾かすこと)や制作途中でも湿度を一定に保っていくという点でした。乾燥に耐えられるようにかなり材料を痩せさせるということを行っていらっしゃるとのこと。毎日、重さを測って管理されるのだそうです。伝統工芸展の様に半年近くも全国を巡回すると、様々な環境に置かれます。特にこの辺は湖の近くだからでしょうか?湿度が高い様です。 どの様な環境でもそれなりの工夫で対応力をつけられるものだと感心いたしました。
 どの作品を拝見しても、形の美しさ、そこはかとないアールの彫が見事でした。個人的に私の好きなアールなのです。きつ過ぎず、それとなく気配を感じさせてくれる絶妙な間合いです。
 



  このあと、ご自宅の階下にある工房を拝見させて頂きました。
                       御自宅から工房へ向かわれる宮本さんです。→






     

宮本さんは大きな家具類もお作りになるので、伝統工芸のお仕事とはいえ、機械も色々ありました。おもしろかったのは、手に持って使う電動工具はコードがどれもとても短くカットされていることです。コンセントからずるずるとコードを引っ張るのがお嫌いで、あちこちにコードリールがセットされ、必要な長さで効率的に使われるそうです。すっきりしていいですね。 

工房を出てくると、垣根に朝顔が。 深く、美しい色でした。
 

     


尚、今秋の日本伝統工芸展に出品された作品「神代欅拭き漆流紋盛器」は、日本工芸会保持者賞を受賞されました。たっぷりとおおらかで、美しい曲線で構成された作品でした。しばしうっとりと眺めておりました…
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 次に宮本さんの工房からすぐ近くある山形満さんの工房をお訪ねした。山形さんは、黒田辰秋氏のもとで6年間修業をされ、現在国画会の会員です。 
 工房はご自宅の一部を改築されました。20年ほど前に山科から移られたそうですが、開発されて大分環境が変わったそうです。


 閑静な住宅街にありましたので、機械の音などはどうするのだろうと思ったのですが、音の心配される大型の機械はお使いになられていませんでした。 山形さんがお作りなるものに合わせた道具と場所で日々、仕事に向き合っていらっしゃるのでした。 広い場所でなくても、色々な工夫がされていて、道具なども取り出しやすいように整然と並べられていました。
 
 皆さん、様々なスタイルで仕事をされていますが、昔ながらのやり方で通されていらっしゃる所に気概を感じさせられました。
 





  一般的に木工を仕事とする場合、機械場や材料置き場を考えて、広いところ、音を気にしなくて良い所を捜します。谷工房もその様な場所に位置しています。 しかし、山形さんの工房はたくさんの住民が静かに暮らす街の中にあり、その暮らしに影響を与えないスタイルで、仕事をされていました。。昔の作り手の多くはこのようなスタイルであったのでしょう。
 私たちが忘れかけていた大切なものを思いださせて頂いた様に思います。
 庭には、色々な野草が大切に育てられていました。
 

     

  まもなくその2に続きます。