こころもよう no.1  2009.12,06


 スタジオ KUKUが発足して7年になろうとしています。谷工房内で小物のブランドとして始まりましたが、時を経るに従って、少しずつ当初とは立ち位置も変化してまいりました。試行錯誤で方向性を模索しながら活動を続けて参りましたが、その間、たくさんの出会いがあり、皆様のお力添えを得て、歩みを進めることが出来ました。
 すぐには、目に見える「かたち」として表れなくても、ずっと想い続けてきたことをこれからも大切にして、使い手と作り手の双方が心から喜びを感じられるもの作りをしてゆきたいと考えております。

 このたび、お恥ずかしいのですが、ちいさな便りを綴ってみました。暮らしの中で出会ったこと、思ったことなどをつたない文章ではありますが、皆様にお届けしたいと思います。
 ささやかではありますが、索漠とした時代に皆様と繋がってゆくことで、ほんの少しでもほっとする時を共に感じることが出来れば幸いです。
 
 「こころもよう − KUKU便り」 と題して皆様に不定期にお届けする便りををこの暮らしのページでもご紹介たします。


 だるまちゃんとてんぐちゃん 

 毎年、11月に開催されている「木の家具展」。この展覧会の会期中は、毎日会場に通って、オブザーバーの奥様たちとご一緒にお客様をお迎えします。                        
 その会期中、会場に向う電車の中のことです。ある駅で2歳くらいの女の子をバギーに乗せた若いお母さんが乗ってきました。今は、バギーに赤ちゃんをのせたまま電車に乗っても良くなったんだ…などと思いながら、本に目を戻しました。

 しばらくすると、女の子が少し声を上げました。退屈したのですね。すると、お母さんの声が聞こえてきました。
 「だるまちゃんは…」「?」「てんぐちゃんは…」「??…!」
聞き覚えのある名前!娘が小さい時に何度読んだことでしょうか。だるまちゃんシリーズの中のてんぐちゃんとの物語なのです。だるまさんに手と足がついている素朴な絵で、てんぐちゃんの持っているものを何でも欲しがるお話でしたっけ… だるまちゃんの姿がくっきり浮かんできました。

 気になって本から目を上げ、その親子に視線を移しました。懐かしい絵が私の目に飛び込んできました。昔と違うのは、絵本がしっかりとしたハードカバーになっていたことでしょうか。うわぁー懐かしい。思わず、お母さんに声をかけてしまいました。
「今でもその本、読まれているのですね。わたしも、娘が小さい頃、せがまれて随分読みました。大好きだったのですよ。」
 すると、そのお母さんは、「今でも、この通り。うちの子も大好きです。今日は、このお話の人形劇があって、一緒に見に行く所なんです。」と、劇のパンフレットを見せてくれました。そうなんだ、今は人形劇にもなっているんですねぇ。
まだ2歳なので、じっと観ていてくれるか、周りの方に迷惑をかけてしまうのではないかと心配したそうですが、劇に夢中になって、とてもいい子だったので、その後何回も通っていらっしゃるそうです。

 そのお母さんによると、昔からある絵本も時代を反映していて、ある場面で、「洗剤」と表記してあったところが「せっけん」と直されていたりしているそうです。「ですから、昔の本とくらべると面白いですね。」
などと、しばらくお話をしていると、終点に着きました。


「どうぞ、楽しんできてください。」
「お気をつけて」
と、声をかけあって別れました。
今ブームの森ガールのようなお洋服をもう少し大人の雰囲気で素敵に着こなしていたお母さんでした。 
 なんだか、心がほんわりと温かくなりました。

 見ず知らずの娘くらいの年齢の方と、絵本を通じて会話を楽しめました。
 素敵な一日のはじまりとなりました…

  ※ 「だるまちゃんとてんぐちゃん」 加古 里子(かこ さとし) 福音館書店 こどものとも