年のはじめに 2010.01.10

 

                          明けまして おめでとうございます。

 KUKUも春になると8年目を迎えることになります。 もの作りにとっては、厳しい時代ですね。物の価格が下がって、安さを求めるデフレの時代。大変ですが、 KUKUは、これまで通りに丁寧な仕事で、長く使えるものを作ってゆきたいと思っております。
 今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 昨年秋、ある女性の木工家の個展に伺いました。「土と木のしごと 〜独楽吟をテーマに」と題して作者の次のような言葉が添えてありました。
「実利性を追い求めてばかりでは、足元にある豊かさを見過ごしてしまいがちではないだろうか。課題のない時間の隙間に小さな光が隠れている。日々のうつろひに喜びを見出す過し方の中にこそ美しさがある。私達のまわりに息づいている、その小さな蕾を身近に置いてみたり、石コロの様に手に馴染ませてみたいと思うのです。」
展示会場の作品とともに心にしっくりと落ちました。

 そこで初めて「独楽吟(どくらくぎん)」という橘曙覧(たちばなあけみ)という名の歌人の歌に出会いました。「たのしみは」で始まって「…とき」で終わる和歌で、暮らしや家族のことなどが詠まれています。極貧の生活ながら、日々の暮らしの小さな出来事に楽しみを求め、その喜びを私たちに伝えてくれます。
全部で52首あります。

 この独楽吟を読んでいると、ふとご近所のおばあ様を思い出しました。いつも美味しい野菜を届けてくださいます。
 年明けの先日、今年88才になる近所のおばあ様に出会いました。氷点下の気候なのに頬が赤く、とてもお元気そうな顔色をなさっていたので、つい、「とてもきれいな顔色ですね。」と、声を掛けると、たった今、気のあった仲間たちとの新年会で、ゆっくりと温泉につかって、美味しいものを食べ、たくさんおしゃべりをしてこられたとのことでした。
どおりで…
 その方は、いつお会いしても、「毎日が本当に楽しい。感謝・感謝の日々です。」とおっしゃいます。
工房のある天池の地は、戦後、開拓団と称した農家の方たちが入植し、何もない荒れ野を耕して暮らし始め、集落を作っていった所です。このおばあ様も、若いころはとても苦労をされたそうですが、いつもニコニコしていて、こちらがたくさんの元気を頂戴しています。
 

 
思いがけずに枯れてしまったと思った花が咲いた、家族が元気で暮らしている、一生懸命作ったものをお客様に喜んで頂けた… などなど、私たちの身の回りには、たくさんの喜びや楽しみがあるのだと独楽吟は教えてくれます。

今年のお正月に一首、選んでみました。
   
             たのしみは そぞろ読みゆく書(ふみ)の中に我とひとしき人をみし時

 なんとなく、読んでいた本から、そうだよねと思う箇所に出会うことがあります。付箋がない時は、ページの端をほんの少し折り曲げておきます。 納得したり、時には全く気付いていなかった自分の気持ちや考えに気づかされることもあります。 読書の楽しみの醍醐味でしょうか。
 今年のお正月は、何度か目を通している勅使河原蒼風の「花伝書」を読みました。とても読みやすい本です。やはり付箋代わりにページの端を折ってあるところは、今も同じく、共感です。 草月流の創始者の言葉は、生け花を通して、人生を語りかけてくれます。
 10年前に初めて読んだ本ですが、きっとこれからも何度となく、目を通し、私を励ましてくれる書だと思います。

 どうぞ皆様にとって良い一年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。