こころもよう no.7  2011.04月


 センス・オブ・ワンダー 


今回の未曾有の大地震は、自然の恐ろしさを見せつけました。けれども反面、春の芽吹き、美しい花の開花、食物を実らせる力なども持ち合わせています。一方、原子力発電所の放射能による環境汚染は、天災ではなく、人類の科学の進歩が誤ってもたらした人災ですが、これらのことにふれて、思いだしたことがあります。

 1960年代、化学物質を原因とする環境ホルモンが人体に与える影響について告発したシーア・コルボーン著「[奪われし未来」は、社会問題となりました。子どもがまだ小さく本当に心配で、特に食物の安全性には神経質になりました。それより30年も前にレイチェル・カーソンが「沈黙の春」で化学物質が生物に与える影響にを告発していました。著作を通してレイチェル・カーソンの存在を知りました。この書物は、農薬の使用制限を法律化し、人々に環境問題を意識させる大きなきっかけとなりました。
 

 アメリカの海洋生物学者でベストセラー作家でもあったR・カーソンが「沈黙の春」の執筆中にがんに侵されながら。最後の仕事として著したのが「センス・オブ・ワンダー」です。この本を翻訳された上遠恵子さんのお話の会が軽井沢で開催され、本の写真を担当した森本二太郎氏のご自宅にお伺いしたこともあり、私のなかでは思い出深い、今でも時々手にする大切な一冊です。詩情豊かな文章と美しい写真は読む人の心を穏やかにしてくれます。

 この本は、56歳という若さで生涯を終えた彼女の遺言ともいえる最後のメッセージとなりました。私の手元にあるのは、1996年の30刷ですが、本の帯に「美しいもの未知なるもの、神秘的なものに目を見張る感性『センス・オブ・ワンダー』を育むために、子どもと一緒に自然を探検し、発見の喜びに胸をときめかせる……・。自然は、嵐の日も、穏やかな日も、夜も昼も、憂鬱そうに見える日も、子どもたちへの一番大切な贈り物を用意しておいてくれます。」と、あります。子育て中の世代、思春期の世代の若い方達に是非読んでほしいと思う一冊です。


 彼女が引き取った甥(正確には姪の息子だそうですが)ロジャーと共に自然の中での暮らしを通して、自然の美しさやすべて命あるものは、それぞれがかかわりあいながら暮らしていることを五感を通して感じる大切さを伝えてくれます。センス・オブ・ワンダーを保ち続けることについて、身近で出来ることを挙げていますので、その一節から

「『知る』ことは、『感じる』ことの半分も重要ではないと固く信じています。子どもたちのであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒や豊かな感受性は、この種子を育む肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なるもにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、驚嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにしてみつけだした知識は、しっかりと身につきます。………
 もし、あなた自身は自然への知識をほんのすこししか持っていないと感じていたとしても、親として、たくさんのことを子どもにしてやることができます。たとえば、子どもと一緒に空を見上げてみましょう。そこには夜明けや黄昏の美しさがあり、流れる雲、夜空にまたたく星があります。子どもと一緒に風の音をきくこともできます。それが森を………さらに、台所の窓辺の小さな植木鉢にまkれた一粒の種さえも………」

 
R・カーソンの大好きなごぜんたちばなの実。私も信州での暮らしの中で出会い、最も好きな野の花です。かなり標高の高いところで咲きます。根子岳の山頂で出会った時の感動は、今でもしっかりとよみがえってきます。


 
 どこかで、「希望の種」という言葉を耳にしました。こどもたちが種であり、種を育てていく人そのものになってゆくのだと思いました。