こころもよう no.16  2013.1025

 それぞれのスタイル 


 秋。展覧会のシーズンですね。この秋は、いつもにもまして、たくさんの展覧会のご案内が届いています。それぞれ工夫を凝らした美しいDMからは、作者やギャラリーの想いが伝わって来ます。そして、今年はうれしい案内がいくつか重なりました。 工房を巣立っていったスタッフ達からの展覧会参加へのお知らせです。キャリアを積んだ人。満を持して初個展を開いた人、それぞれですが、どんな展覧会も私達にとっては、うれしい知らせです。


 

 
 種のメンバー:HPより

まずは、「種」。地元の展覧会が縁で集まった6人の若者たちの「種」展。「木のものが暮らしの種になる。きっかけとなる」ことを願うグループ種。工房から独立した2人が参加しています。2回目になる今年のテーマは「女性のための木(気)づかい」青山の素敵なギャラリーで開催されました。それぞれ趣向を凝らした家具が展示されていて、ひとりひとりが丁寧に接客していました。

  佐々木保さん。以前はロケット製作に関連する企業に勤めていましたが、工房で修業後に小諸市で独立。白木の素材を生かした力強いディテールの家具作りをしています。傍らで、絶対音感を生かして地元の小学生用のコカリナの制作も続けています。彼の撮る美しい写真も評判で、色々な方面で活躍しています。

 
 種展。ギャラリーの窓辺

 同じくメンバーの芦田貞晴さん。(今年の種展は休会)工房での修業は9年と最長のスタッフでした。コツコツと納得行くまで丁寧な仕事をしていました。作家としてのデビューは遅かったのですが、余白を大切にした、とても静かな彼らしい作品作りをしています。奥様は木彫り作家の櫻井三雪さんです。お二人で丹精されている上田市にある工房の庭は、実生で育てた木々に覆われ、心休まる場となっています。


 
 工房からの風で接客中の菅原さん
 写真:稲垣早苗さん

 先日、千葉で行われた「工房からの風」という公募展に出品していた菅原博之さん。今回が2回目の参加ですが、奥様の和歌子さんと共にとても充実した作品展開をしていました。最近の仕事は、器やカトラリーが中心で、仕上げやデザインに定評があります。ディスプレイデザインの仕事から転向。KUKUを立ち上げる時には商品開発に色々なアイデアを出して、KUKUの大きな要となったのち、秩父で独立後もしばらくは嘱託として手伝ってくれました。。社交的で明るい奥様の大きな支えもあって、人気の作家になりました。工房に来た時1歳だった坊やがもう中学生。素敵なファミリーです。


 
 修業時代の小山さん

 10月初旬、麻布Rでの初個展で鮮烈なデビューをした小山剛さん。20歳で工房に来ました。これまでで一番若く、一人暮らしが出来るのだろうかと心配でした。本当に木が好きでしたが、それだけに捉われずに、骨董や生け花など、色々な世界のことを実によく学んでいました。私どもの蔵書を最も活用した一人ではないでしょうか。軽井沢で独立して5年。満を持しての個展でした。30歳にして多くの人を魅了する独特の世界感を築きつつあります。国展にも出品し、研ぎ澄まされた美意識がこれからどの様に進化してゆくのかが楽しみな木工作家となりました。 (会場で写真を撮り忘れました…)

 
  2人展での酒井さん

10月中旬、新宿高島屋で2人展に参加した酒井航さん。KUKUでは、彼と最も密に仕事をしてきたのではないかと思います。几帳面で段取りの良さは抜群。同じ仕事でも工夫を重ね、常にレベルアップを目指していました。 地元の福岡市に戻り、独立をして3年目。東京での初めての2人展です。手仕事で丁寧に仕上げながらも、あえて手作り感を遺さないシンプルなフォルムの小物と注文家具の制作を行っています。将来に向けては、キャビンアテンダントの奥様と一緒にセレクトショップも手掛け、作家というよりは、もう少し組織的なスタイルでの仕事をやっていきたいと、夢を語ってくれました。
  


 他にも県内外で、それぞれのやり方で仕事をしている元スタッフ達がいます。谷工房から船出した彼らの共通点。それは、皆がそれぞれに違った形やスタイルでの仕事をしていて、谷工房のスタイルとは、異なることです。

 
   上から、菅原さんの色漆の器、芦田さんの楓の皿、
   酒井さんのトング、小山さんの黒漆の角皿

○○さんのお弟子さんだったというと、なんとなく作品から師匠の雰囲気が感じられることが多いのですが、そうではなく、それぞれが、独立して作品を発表した時点で、自分らしいスタイルが出来上がっているのです。工房での修業時代には、技術は日々仕事をしていれば、自然と身についてゆくので、この時期には感性を磨いてゆくことが何よりも大切であるということをいつも話していました。
 その想いが伝わったのなら、私どもにとって、こんなにうれしいことはありません。私達は、真摯に木と向き合って仕事をしている彼らの活躍を静かに見守ってゆくだけです。