こころもよう no.19  2015.08.03

 KUKUの小さな展示室がオープンします 



 30年以上になる古い自宅。若い頃には、友人達や家族がよく泊りに来ていたのですが、年を重ね、宿泊の来客も減りました。将来のことを考え、昨年暮れから春にかけて、自宅の一部のリフォームに合わせて、客間を10帖ほどのKUKUの展示室にリフォームしました。ここで日々、仕事をし、在庫を収納し、作品も展示しています。未完成ではありましたが、5月にプレオープンをし、現在はいったんクローズして、仕事をしながら8月中旬のオープンに向けて、準備をしているところです。 これまでお客様が来訪されると、その都度、倉庫やKUKUの仕事をしている母屋から作品を運んで御覧頂いており、気楽に見て頂けるスペースが欲しいとずっと考えていました。

  リフォームは、自然素材で家を建てる上田市のアトリエDEFという工務店にお願いいたしました。4ヶ月ほど、厳寒の時期を挟んで、毎日色々な職人さんが通って来ました。現場監督の方がとてもしっかりと仕事をされる方で、細かい点も相談をしながら進めて下さいましたので、かなり満足した出来上がりとなりました。 床は羊毛の断熱材を敷き詰めて、無垢の栗の板を張り、そのほかは杉を使っています。床には蜜蝋ワックスをスタッフ皆で塗りました。天井・壁はモイスという天然の鉱石を使ったボードを張り、珪藻土を塗りました。すべてが呼吸をしているからか、今年の梅雨はいつもの季節よりもさらっとした感じで過ごせた様に思います.。





 3畳分残した和室は小上がりにして、壁と天井は、黒谷和紙の作家ハタノワタルさんに和紙での施工をお願いし、京都から1泊2日でいらして頂きました。いつもKUKUの小物の写真撮りにハタノさんの和紙を使っているのですが、光がとてもきれいなのです。 自分で楮も育て、和紙を漉き、施工やデザインの仕事もされているとても意欲的な方です。何種類か持ってきて下さった紙の中から、自然光、照明のもとでの見え方を検討し、グレーの色を選びました。紙の下・左が上になる様に順番に日が昇るイメージで貼るそうです。その後、KUKUでは和紙を貼ったコラボの作品作りに繋がっていて、現在も進行中です。 

 工務店では、合板の仕事はしないので、在庫収納用の作りつけの什器は、工房で制作しました。 和紙を貼って完成させるため、無垢の板ですと、反りが出てしまうのです。カウンターは、柿渋を塗った後に顔料で着色した和紙を貼り、家具用のオイル(オリオ2)を塗りました。オイルを塗ることで、耐水性がつき、水拭きもOKです。本来は、和紙を貼ってから加工をするため、数日かかるとのことでしたので、貼ればよい状態にして持ってきて頂き、什器が完成したところで工房のスタッフが貼りました。


 引き戸は建具やさんに特別に中に羊毛の断熱材を入れた襖戸を作ってもらい、色違いの和紙を貼ってもらいました。引き手は、東京のかなぐやさんから六角形のデザインのものをとりつけましたが、凛とした雰囲気の戸になりました。とても丁寧なお仕事をされる女性作家で、建築雑誌コンフォルトに掲載された紹介記事を見て、いつか使ってみたいと思っておりましたので、練馬の工房をお訪ねいたしました。
 


 東側の朝日の当たるカウンター奥の窓。毎日眺めながら過ごしているうちにやっぱり障子だと思うようになり、後付けで障子を作ってもらいました。前のカウンターに置く棚の高さに合わせて横2本だけの桟にして、薄い和紙を袋張りにしました。素素さんというブランドで仕事をしている美濃で修業された女性作家のものですが、凛とした和紙を漉いています。和室の飾り窓とこちらの窓には、4匁の薄手の和紙を使いました。透け感が美しく、光が優しく入って来ますし、保温効果も抜群。和紙ってすごい!!


 プレオープン時には、カーテンで覆っていた上の棚にもようやく扉がつき、下の収納と同様に貼る和紙を注文しています。何とか、オープンに間に合わせる予定です。 作りつけの収納は、一部を除いて、戸が和紙貼りの取り外しが簡単なマグネット仕様になっています。場所をとらずに開閉が可能な優れ物です。



 デッキのある外壁に付ける「studio KUKU」というステンレス製のサインを、金工作家杉島大樹さんに注文しています。オープンの頃に出来上がるでしょうか?先日、スタッフ全員で駒ヶ根の工房をお訪ねしましたが、眺めの良い広々とした地で、工夫した道具類を使い、堅実な仕事をしていらっしゃいました。

展示は、スタジオKUKUの作品が中心ですが、お付き合いのある作家さんの作品や、私が集めた作品なども季節の室礼に合わせて、展示したいと思っております。いつか機会があればとの願いがかない、素敵な作家の方々の力をお借りして、心地良い空間が出来上がりつつあります。 梅雨の間に茂った庭の草木の手入れが追いつかないのですが…  是非、標高約1000m、緑の中の小さな展示室にお遊びにお出かけ下さいませ。

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 2015年7月記