展覧会の作り方  2008.2.28

 

東京木場の現代美術館で開催中の [川俣正 −通路ー] を観て来ました

 現代アートって、分かりにくい、とっつきにくいと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、分かろうとしなくても、心で感じ、こういう変わったことをしている人がいるということを知るだけでもいいのではと思うと、、楽しく鑑賞できます。 そう、教えて下さったのが、川俣正氏です。

出会い
 川俣氏がちょうど東京芸大先端芸術表現科の教授を務めていた頃、公開授業があり、参加しました。3日間でしたが、氏が進めていた「川プロジェクト」の一環として、1日は、利根川の川下りの実習。取手の町を中からではなく、船の中から見た町の情景から、リサーチするというものでした。 視点を変えることで、見えるもの、感じるものも日常とは異なるということを改めて実感させられました。 又、この授業を通して氏から教えられたことは、どんなに素晴らしい環境におかれていても、意識化しない限り、その素晴らしさを生かしていくことが出来ないということでした。

 豊かな自然環境で生活していても、そのことがあたり前になって無意識でいると、その素晴らしさ、ありがたみを実感できずにもったいないですね。東京から、信州に来て最初に感じたことは、ずっと住んでいると、あまりにあたり前すぎて、この自然の豊かさがどれだけ貴重なものか意識できないことがあるということでした…


現代美術館の企画
 一度、川俣氏の表現したものをまとまった形で観られればと思っていたところ、今回実現しました。
 ここ1,2年の東京都現代美術館は、面白くなりましたね。 あの金沢21世紀美術館のキュレーターが移ってきて、企画をするようになってからでしょうか?

 今回の展覧会は、ただ、完成された作品を静かに見るという従来の美術鑑賞からすると、奇想天外でしょう。
 作品は、未完成のものもあり、日々進化してゆきます。そして、色々な参加型のイベントがあり、見ているだけではなく、参加していると感じられるものです。 今回の企画には、300人ものボランティアの方が関わったそうです。世界で市民を巻き込んでのプロジェクトを遂行してきた川俣氏ならではですね。
 詳しい内容は、美術館のHPに載っていますし、ブログで進行の様子が分かりますので、是非ご覧になってみてください。 ⇒http://www.mot-art-museum.jp/
 観かたによっては、1日楽しめるのではないでしょうか。 今回初めての試みで、会期中のパスポートが発行されていますので、逐次進化してゆく様を見たり、数回企画されている川俣氏と各界のスペシャリストとのトークは、とても興味深く、内容の濃いものですので、トークを聴講するだけでも価値があります。 

展覧会の作り方
  私が行った日に、ちょうどこの企画をしたキュレーターの住友文彦氏とのトークがありました。
 いくつか、興味深かったお話から…

 ・色々な人や社会との関わりの中で、ひとつのプロジェクトとしての方向性を見出してゆくのが、仕事のスタイル。
    ⇒ 今回の企画は、美術館を人が行きかう通路とみなして、日常とアートを結びつけるもの。
 ・脱力、スルー出来るプロジェクトを目指している。 ⇔ これまでの美術館のヒエラルキー
 ・淡々と進んできた仕事。その場その場で刹那的に考えてきた仕事 = 通路
  イメージを作って、目標に向って構築してゆくのではなく、細かい所から出発して結果として形付けられていくと
  いう展覧会の作り方をしたかった。

 このような展覧会の作り方は、2005年に開催された現代アートの祭典「横浜トリエンナーレ」で、総合ディレクターを勤められた経験が、生きているのでしょう。
 横浜トリエンナーレは、「展覧会は、可変的な運動態である」というコンセプトのもと、作家・作品・現場・観客が関わって作品を鑑賞および、体験する場として、位置づけられていました。 私もこのトリエンナーレで、場と関わる、人と関わるという展覧会を体験しました。見たこともない作品がものすごい数、展示されていて圧巻でした。


 目標に向け、段取りを立てて、計画的に仕事をしてゆく。正統派の考え方で、わたしは、どちらかというとこのタイプに近いかな? けれど、どうにも目標が見つからないとき、もしくはきちっ、きちっと枠を作っていくことが時として自分を動けなくさせてしまうような時、肩の力を抜いてまずは目の前のことから一歩踏み出してゆく。すると、おのずと道が見えてくる、作られていくということもあるなあと、川俣氏が盛んにくりかえしてた「スルーする」という言葉を聞いて、妙に腑に落ちたのでした…

 わくわくする展覧会に久しぶりに遭遇し、とても充実した一日となりました。
 4月13日(日)まで開催されています。 10:00〜18:00
 図書館もとても充実していますので、何かを発見しにお出かけになってみてはいかがでしょうか?