つなぐ  その1  2008.07.04

 
 秋に予定している展覧会の企画を考えながら、ふつふつと心に湧き出て来たことがあります。
それは、「つなぐ」ということです。色々なことを体験してきた団塊の世代前後の作家たちから、自分の仕事のスタイルを模索している若い作家たちに、大切な何かをつなげてゆきたい… これからの社会を作ってゆく若い世代へ。

 この「つなぐ」ということを考えるようになったのには、あるきっかけがあります。

 3年前になりますが、デパートの催事で、秋田で曲げわっぱを制作していらっしゃる柴田慶信氏親子とご一緒することがありました。 お父様の慶信氏は、実演用の台の上で、1日、仕事をしていらっしゃいました。 全国で実演をして来たそうです。2番目の息子さんが、お父様の脇で販売を担当していました。
 そのときは、KUKUとしてデパートでの催事は、初めてでしたので、慣れないことに戸惑う私に、接客の仕方などをアドバイスしてくださいました。 
お二人の息の合った仕事ぶりに感心していた私は息子さんに
「お若いときから、お父様のお仕事をつがれて、えらいですね。若い方が、職人の世界から、どんどん離れていっている時代ですのに…」と、話しかけました。 
かえってきた言葉です。
「親父が偉いのです。職人の仕事で生活することが難しい状況があるので、跡を継げないのです。でも、僕の親父は、子どもたちがこの仕事で食べていかれるように道を開き、つなげてくれましたから。」
 
 私は、この言葉に、大きな衝撃を受けました。ちゃんと、あとの世代へつないでゆくことを考えながら、柴田さんは仕事をされてきていたのでした。 新しい用途やデザインの開発、そして曲げわっぱのことを多くの方に知ってもらうために海外でも活躍されてこられた様です。 
 そんな父親を見ながら育った息子たちは、尊敬する父のあとを継ぎ、これからの仕事を担っていらっしゃいます。
 社会情勢が悪い、今の若い者は根気が無いし、地味な仕事を嫌うからと、色々な理由があって、跡継ぎがいない仕事がたくさんあります。 もちろん、それだけではなく、たくさんの事情がありますが、そんな厳しい状況でも、しっかりと将来を見据えながら、仕事と向き合ってこられたのは、すごいと思いました。
 そのとき、「つなぐ」という言葉が、私の心の奥深くに入ってゆきました。


 その後、KUKUの仕事を通して、多くの若い作家さんたちと出会いました。 皆、悩みながらも一生懸命それぞれの仕事と真剣に向き合っています。 これまでに仕事を通して感じてきた大切なことを、次の世代へもつなげてゆかなければ… そして微力ながらも、若い作り手たちが少しでも良い仕事を出来る環境づくりのお手伝いが出来ればいいなと思う様になりました。

 
 今だけ良ければばいいのではなく、次の世代にとってもずっと良いためにどうしたらいいのか?少し、立ち止まって、次の世代のことにも心を配ることが出来たら…
 ニュースを耳にする度に、心が痛くなります。 環境破壊、偽装事件、年金や税金の問題、エネルギーの問題などなど… ため息の出ることばかりです。 このまま行くと、私たち大人が目先のことだけしか考えないでやって来た結果としての負の遺産を若い人たちに押し付けることになってしまいそうです。

 誠実に仕事をしたことが受け入れられ、日々の生活を営むことにつながってゆく… そんなあたり前で、ささやかな希望の灯が消えないようにしてゆかなければならないと強く思います。
 蒔かれた種が芽を出し、双葉が開き、自分の力で伸びてゆける様に…